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英国の新鋭空母「クイーン・エリザベス」を旗艦とする空母打撃群が神奈川の横須賀など、国内各地へ入港した。
これを機に、日本は同じ海洋国家の英国と安全保障上の連携を一段と進めたい。それが、インド太平洋の海などで覇権主義的行動をとる中国を抑止し、平和と繁栄を保つ道であるからだ。
「クイーン・エリザベス」は英空軍と米海兵隊のステルス戦闘機F35B18機を搭載する。空母群は米駆逐艦とオランダのフリゲート艦を含む水上艦9隻、潜水艦1隻、要員3700人の大きな艦隊で、横須賀のほか、佐世保(長崎県)、舞鶴(京都府)、呉(広島県)に分散入港した。
ジョンソン英首相は今年5月の空母群出港の際、「中国の友人らに、われわれが国際海洋法を信じていることを示す」と訓示した。中国による国際法無視の行動を容認しないということだ。英国は遠征の目的地を日本と位置づけた。新型コロナウイルス禍にあっても大規模な艦隊を派遣したのは、中国抑止に日本との協力が欠かせないと判断したためである。
7日の日本記者クラブでの会見で、ムーアハウス空母群司令官は遠征は「この(インド太平洋)地域で英国が一貫してプレゼンスを示すことを意味する」と語った。ロングボトム英大使は日英が自由と民主主義、法の支配など価値観を共有すると強調し、「パートナーシップがさらなる高みへ引き上げられる」と述べた。
日本政府はこのような英国の姿勢を大いに歓迎すべきである。
岸信夫防衛相は6日、「クイーン・エリザベス」に乗艦後、「インド太平洋地域の平和と安定に対する英国の強い意思を感じられた」と語った。
空母群は日本寄港前に、日米英蘭にカナダを加えた共同演習を行った。日本近海で活動を活発化させる中国の海空軍を牽制(けんせい)するねらいもあり、今後も共同演習が実施される。
ムーアハウス司令官が会見で語ったように、「(自衛隊との)相互運用性を高め、脅威を抑止する」ためにも必要だ。
中国外務省は「武力をひけらかすのか」と反発するが、英空母群派遣はあくまで抑止のためである。日本は価値観や戦略的利益を共有する英国と安全保障、経済面で協力を深めていくべきだ。
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2021年9月8日付産経新聞【主張】を転載しています